フォト引用:ちびまる子ちゃん イタリアから来た少年

「ちびまる子ちゃん」で知られる漫画家のさくらももこさんが8月15日午後8時29分、乳がんのため死去した。53歳だった。本名は非公表。告別式は近親者で行った。所属事務所が27日に公式ブログで明らかにした。

引用:さくらももこさんが死去、漫画家「ちびまる子ちゃん」(日本経済新聞)

突然飛び込んできた悲報。驚きと同時に何故か悔しさがこみあげてきた。

「まだまだ、これからだろう。早いよ」

フジテレビは、現在放映中の「ちびまる子ちゃん」は、追悼のメッセージと共に放送の継続を発表。そしてさらに・・・、

さくらももこ追悼スペシャルとして『映画 ちびまる子ちゃん イタリアから来た少年』を9月15日(土)に放映した。

『映画 ちびまる子ちゃん イタリアから来た少年』

あらすじ

穏やかな初夏のある日、花輪くんの屋敷に世界中(アメリカ、ハワイ、香港、イタリア、インド、ブラジル)から6人の少年少女がホームステイにやってきた。日本好きの6人の希望からまる子やたまちゃん、はまじたちの家に滞在することになった。

イタリアから来たアンドレアは、まる子の家族の了承を得て、まる子の家で過ごすことに。そしてマーク(アメリカ)は花輪くんの家で、シン(インド)ははまじ宅、シンニー(香港)はたまちゃん宅、ネプ(ハワイ)は小杉宅、ジュリア(ブラジル)は野口宅で過ごすことになった。

まる子の家ではアンドレアが、祖父の話をしていた。カメラマンで、昔日本に来ていたという祖父の名は“マルコ(Marco)”。その為、アンドレアはまる子に興味をもったのでした。そしてその祖父は、半年前に亡くなっていました。大好きな祖父が愛した日本を一目見たい、それがアンドレアの目的でした。

学校では6人が授業に参加、サッカーや音楽の時間をみんなと一緒に過ごしていた。放課後、花輪くんが次の休みに京都への旅行を提案するのでした。するとアンドレアは「大阪へ行きたい」と主張し、意見が真っ二つに。結局旅行は大阪と京都の二手に分かれることになり、京都にはマークとシンニーとシン(花輪くん、たまちゃん、はまじも一緒)、大阪にはアンドレアとネプとジュリア(まる子、小杉、野口さんも一緒)が行くことになりました。

アンドレアが大阪に行きたかったのには理由がありました。それは祖父のマルコが知り合った夫婦が大阪にいて、その人に会って祖父の足跡を知りたかったからでした。その夫婦は「道頓堀ののんき屋呑兵衛」というお店をしているらしいのだけど、住所がわかりません。手掛かりは店の名前だけでした。

大阪に着いたまる子たちは、たこ焼き食べたり、なんば花月で楽しんだ後、道頓堀の交番で「のんき屋呑兵衛」の場所を尋ねます。しかし目当ての店はずいぶん前になくなってました。落胆を隠せないアンドレアでしたが、入ったお好み焼き屋のご主人が、「のんき屋呑兵衛」を知ってたのでした。夫婦の名前はりょうさんとチエちゃん。そして今は東京・上野でスパゲッティのお店をやっているらしいのだが、店名は不明とのこと。

アンドレアたちの帰国まであと二日。花輪くんはホームパーティーをしようと提案してきました。みんなはすっかり仲良く打ち解けて、まる子もすっかりアンドレアと親しくなってました。みんなで楽しくパーティーを過ごす中、アンドレアはたまちゃんのお父さんから借りたライカ(カメラ)で、パーティーを楽しむまる子を撮りました。

帰国前日の夜、まる子はアンドレアを連れて、巴川(ともえがわ)の灯ろう流しに誘います。アンドレアは青の浴衣を、まる子は金魚模様の浴衣、2人で願いごとを・・・、アンドレアは「またまる子に会えますように」、まる子は「またアンドレアに会えますように」と書いて灯ろうを流しました。流し灯ろうを見送りながら、アンドレアに夢を聞かれたまる子は「漫画家になりたい」と言い、アンドレアは「漫画家になったまる子を撮りたい」と言うのでした。こうして最後の日の夜が過ぎていくのでした。

帰国当日、羽田に着いた一行は、別々に旅立っていきます。アンドレアは一番最後で飛行機は18時発。するとまる子とおじいちゃん(友蔵)は、出発までの間、上野に行って夫婦の店を探すことを思いつきます。17時までに空港に戻って来ることを約束すると三人で上野へ。

夫婦がやってるお店の名前がわからないので、交番で尋ねても手掛かりは掴めず、いたずらに時間だけが過ぎていった。不安と弱音が襲うそんな時、三人の前に飛び込んできた『スパゲッティ マルコ』という看板の店。三人に直観が走ります。アンドレアは店頭で準備中の札を出していた女性に「マルコの孫です」と声をかけます。すると声をかけられた女性の目に涙が・・・。アンドレアは祖父マルコが目の前の夫婦からもらった栓抜きを見せると、夫妻は大喜び。しかし祖父マルコが半年前に亡くなったことを知ると、悲しみ落胆します。店内を悲しみがつつむ中、りょうさんが昔マルコに作ってもらったスパゲッティ、マルコスペシャルを作り始めます。それを食べたアンドレアは「おじいちゃんのと同じ味」と感動するのでした。お別れに祖父マルコの若い頃の写真を貰ったアンドレアは、満足しながら空港へ向かいます。

予定より遅く空港についた三人。慌てて出国しようとするアンドレアに、名残惜しさが募るまる子、「アンドレアのことを一生忘れない」と言うまる子に、アンドレアも「一生忘れないよ。忘れるわけないじゃないか」と答え、再会の約束の印に祖父の形見の栓抜きをまる子に渡しました。そして泣き出しそうなまる子に「笑ってください」と言って、アンドレアは帰国していくのでした。

たまちゃんの家では、お父さんが子供たちの写真を整理していた。そしてアンドレアが撮った「最初の1枚」を確認します。それは赤いワンピースを着たまる子のベストショットでした。

子供達の細かな心情を描いた秀作?「ちくしょー、油断した」

まる子たちの町にホームステイで訪れた世界の子どもたちと、まる子たちの心温まる出会いと別れを描いたこの作品、通常のTVアニメ同様に小気味よいギャグとちょっとの感動で、単に「楽しかったね~」「この出会い忘れないからね~」で幕を閉じる作品とばかり思っていた僕だったが・・・。

まる子とアンドレア

この物語の中核をなすのが、まる子とイタリアから来た少年アンドレアとの交流だ。「大好きな祖父が愛した日本の足跡を辿りたい」という強い目的をもって日本に来たアンドレアの為に、一生懸命に遁走するまる子。お互いの優しさに触れていく中で、まる子とアンドレアはお互いに友情以上の思いが芽生え始める。それは初恋の一歩手前の様な感情・・・。がお互いにそれとは気付かないまま別れの時を迎えてしまう。

特にまる子の移り行く心のひだが見事に描かれていて、そんなまる子の健気さに“うるっ”としてしまう。また、アンドレアがたまちゃんのお父さんから借りたライカ(カメラ)を借りてまる子を撮影するシーン、「僕が初めて撮影した日本人です」というアンドレア。このセリフが何故だかまた“うるっ”なのだ。そしてエンディングでその写真が出るとまた“うるっ”としてしまう。

シンが触れる人の優しさ

インドから来たシンはどこか世間を斜に構えて見ているような男の子だった。そんなシンが京都旅行の時、どこかの神社でお参りをしようとしてお財布がないことに気付く。財布を落としたシンは不安を隠せないまま、一緒に同行した仲間と共に財布を探すのだが、そんなシン達の事情を知って、地元の人や学生さんも一緒になって探してくれる。そして学生さんが財布を見つけてくれる。そんな日本人の優しさに触れたシンの目が潤む。ここも“うるっ”とするポイントだった。

ジェラシー半端ない丸尾君

本作品では、丸尾君がギャグポイントを一手に背負っていると言っても過言じゃない。世界から来た友達を各自宅にステイさせることに最初は否定的だったまる子たち。でも丸尾君だけはウェルカムの大歓迎でした。お気に入りのアンドレアを自宅に招待したいと熱望していたが、あっさりとフラれて、アンドレアはまる子の家に。まる子に対して、もうジェラシーしかない。そして大阪と京都へみんなで旅行をすることを知った丸尾君は、何が何だか・・・パニックに陥ります。もうジェラシー半端ない状態に。ちょっと可哀想だった気もしたけど・・・これが丸尾君が“ちびまる子ちゃん”でのポジション(さだめ)なのだから仕方ないか・・・。そんな丸尾君の支離滅裂さが笑えるのだ。

「ん、これ実話?」

帰国前日、まる子とアンドレアは巴川(ともえがわ)の灯ろう流しに行きます。そこでお互いの願いを書いた灯ろうが流れていくのを見ながら、アンドレアがまる子に将来の夢を聞きます。それに対してまる子は「漫画家になりたい」と答えるのだけど、これを聞いて僕は「あれ、この話って実話なのかな?」と思ってしまった。

なぜならばそれは、「ちびまる子ちゃん」の数ある話の中には、原作者のさくらももこの幼少期の体験が色濃く反映された実話も含まれているものもあったりするし、それにもまして、さくらももこの小さい時の夢が、確か“お笑い芸人”か“漫画家”だったなぁと思い出したからなのだ。でもこの件に対してさくらももこは「実話ではない」と否定しているようです。

唯一無二の才能を惜しみつつ、まとめ

「さくらももこ追悼スペシャル、見ておこう」くらいのノリで見た『映画 ちびまる子ちゃん イタリアから来た少年』だったのだけど、まさか予想に反して感動するとは・・・、「油断ししてました、さくらももこさん、ゴメンナサイ!!」

「ちびまる子ちゃん」を見ていると、いい大人が気が付くとそのストーリーに引き込まれている。それは懐かしさからなのか?当時身近だった出来事を描いているからなのか?それはわからないけれど、これは作者の才能なのだろう。唯一無二の才能が失われたことを惜しみつつ、録画した『映画 ちびまる子ちゃん イタリアから来た少年』はHDから消去せず保存することにした。