地球上空の気象コントロール衛星が暴走。地球規模の同時多発的な異常気象(ジオストーム)による滅亡のカウントダウン。久しぶりの大規模なディザスタームービー『ジオストーム』が公開された。運よく公開日に観ることが出来たので、さっそくレビューをしたいと思います。

気象コントロール衛星の暴走が起こす地球滅亡のカウントダウン(あらすじ)

2019年。世界は共同で国際気象宇宙ステーション(ICSS)を中心に、気象コントロール衛星によるシステム(愛称ダッチボーイ)を構築していた。ある日、システムの総責任者であるジェイク・ローソン(ジェラルド・バトラー)は、アメリカ合衆国上院の査問会で不興を買い責任者を解任されてしまう。そしてその後任には弟のマックス(ジム・スタージェス)が起用されることになった。

2022年。アフガニスタンの小さな村が村人ごと凍り付くという事態が発生。原因は気象コントロール衛星の不具合によるものだとの見解を受け、事態を重く見たアンドリュー・パルマ米国大統領(アンディ・ガルシア)は、詳細の隠ぺいを画策するが、マックスは「手遅れにならないうちに、できるだけ早く過失を認めて不具合の修正を行うべきだ」と主張する。マックスの主張を受けてパルマ大統領は、不具合の対策として3年前に解任されたマックスの兄ジェイクをICSSに送り込む。

その頃、香港では気温が異常に上昇をし始め、その結果、道路下のガス管が破裂、街中で火災や爆発が起こる。香港に住む、ダッチボーイを管理する香港支局の職員チェン・ロン(ダニエル・ウー)は、この災害から命からがら、なんとか逃げ延びる。

ICSSに到着したジェイクは、司令官のウーテ・ファスベンダー(アレクサンドラ・マリア・ララ)とその部下達と共に、香港で起きた事件に対し早速調査をはじめ、香港の気象を制御している衛星は壊れていてデータも全て消滅していることが判明する。香港でもチェンが、ダッチボーイで何が起こったのかを調査していた。チェンは、マックスに連絡をとりダッチボーイにアクセスできないことを伝える。そしてもし今後もダッチボーイの故障による異常気象が続けば、世界規模の異常気象「ジオストーム」が起きる可能性を警告する。翌日マックスは、コンピューターに詳しいハッカーでもあるデイナ(ザジー・ビーツ)にアクセスできなくなった原因を探らせ、原因は誰かが故意に操作し、アクセス権をブロックしていたことが判明する。

ジェイクとウーテは宇宙に放り出されたデータドライブの人力回収のため船外で作業中、原因不明の事故がICSSで発生。なんとかデータを回収したジェイクは、事故の原因を突き止めようとダッチボーイにアクセスするが、2人のアクセス権が、ブロックされていることに気づく。システムを知り尽くした人間による犯行としか思えない一連の工作に対しジェイクは、ある恐ろしい仮設を導いていた。

香港で何者かの妨害に会いながらも調査をすすめていたチェンは、渡米してマックスに真相を伝えようとするが、マックスと彼の婚約者で大統領のシークレットサービスのサラ(アビー・コーニッシュ)が待つ目の前で、何者かに背中を押され車にはねられてしまう。チェンを助け起こすマックスだが、瀕死のチェンは「ゼウス」とだけ言い残し死んでしまう。

ICSSと地球、ジェイクとマックスは情報を交換しながら並行して調査を進め、一連の災害は、ダッチボーイの故障ではなく故意に引き起こされた可能性が高いこと、そして政府関係者にその犯人がいる可能性が高い事を共有する。そして「ゼウス」とは、地球規模で異常気象を起こさせ“ジオストーム”を発生させる計画だと知る。またダッチボーイの一連の誤作動は、コンピューターウィルスが原因だと突き止める。そしてそのウィルスが全員のアクセスもブロックしているのだった。ジェイクはマックスに、大統領が裏で絡んでいるのではないかという可能性を話す。にわかには信じられないマックスだが、可能性はゼロではない。そしてダッチボーイのウィルスを除去するには、システムのリブートが必要で、そのためのリセットコードは大統領が持っているのでした。

ジェイクの仮説を疑いながらもマックスは、大統領も参加するフロリダ州のオーランドの党全国大会に同行する。そしてマックスは、機会を伺いながら大統領との接触を試みる。そんな状況の中、ダッチボーイでは「ゼウス」が発動、ジオストームへのカウントダウンが始まっていた。

日本の東京では巨大な雹が襲い、ブラジルのリオデジャネイロでは異常低温により海や街が凍り、インドのニューデリーでは巨大な竜巻が発生、アラブ首長国連合のドバイでは巨大な津波が都市を呑み込むなど、異常気象による大きな被害のニュースが飛び込んでくる。そしてここオーランドでも巨大なカミナリ雲が発生しようとしていた。

大統領との接触に焦るマックスは、国務長官のデッコム(エド・ハリス)の問いかけに状況を説明すると、リセットコードは大統領の指紋を使用しており、つまり大統領自身がコードだとデッコムから知らされる。協力を約束したデッコムだったが、突然マックスを殺そうと銃を発砲。寸前のところでかわし逃げ出したマックスは、デッコムこそが黒幕であったことに気がつく。そしてサラに黒幕の正体を明かし、ジオストームが迫っていることを告げる。ここオーランドでも巨大なカミナリ雲の影響で街中に落雷が相次ぎ始める。ジオストームまでのこされた時間が少ない中、マックスとサラは自身がリセットコードである大統領を連れ出す為の行動にでる。

黒幕であるデッコムの企てる陰謀とは? 厳しいシークレットサービスの警護、そしてデッコムとその部下たちの妨害工作の中、二人は大統領を連れ出すことが出来るのか? そしてダッチボーイのシステムをリセットすることが出来るのか?

ジオストームまでのカウントダウンによって地球滅亡までの時は狭められていく。

“パニックに陥る都市”ディザスタームービーとしての『ジオストーム』

ディザスタームービーの魅力は何といっても“非日常の疑似体験”につきます。地震や火災、異常気象や隕石落下などなど、ディザスタームービーが表現する破壊のネタは様々で、パニックを起こす人々やそれに立ち向かう人々の人間模様が描かれる、自然対人のドラマがその殆どだ。本作品『ジオストーム』では、気象コントロール衛星の異常が起こす異常気象がテーマとなっています。そして今風の設定にするならば例えばAIの暴走なんてのが想像の域だけど、この作品では、気象コントロール衛星の異常は人為的に仕組まれたと言うところが注目点。『ジオストーム』は人対人のドラマでもあるのだ。

香港の異常高温による大火災、東京の巨大な雹、リオデジャネイロの異常低温による海と都市の凍化、ニューデリーの巨大竜巻、ドバイを襲う大津波、オーランドの落雷が、本作品では見せ場として描かれている。表現と根拠に理解し難い面もあるけど、映像の迫力としては十分楽しめて満足できた。

ディザスタームービーと言えば、ローランド・エメリッヒ監督の作品が有名だ。『デイ・アフター・トゥモロー』では、凍り付いたニューヨーク、『2012』地盤がひっくり返るほどの大地震で壊滅する都市や大津波や火山の大噴火、『インディペンデンス・デイ』では巨大なUFOの出現シーンや一瞬にして火の海と化す都市などの描写が秀逸。それと比較すると『ジオストーム』のディザスター描写は確かに劣る様に思われるが、監督のディーン・デヴリンはエメリッヒ監督のいくつかのディザスタームービー(インディペンデンス・デイ、GODZILLA等)にも携わっている。エメリッヒへのオマージュ的なシーンも確かに見て取れる。ただ彼の狙いはディザスター描写だけではない様です。

『ジオストーム』からのメッセージ

ディーン・デヴリン監督は、この『ジオストーム』を通じて何を我々に伝えたかったのか?彼はこんなことを語っています。

デブリン監督は「ある種、“訓戒”の物語として作っているんだ。願わくは気象コントロール衛星などの手段を講じなければ地球を救えないという極限の状態になる前に、地球温暖化をせき止めたい。そういうメッセージとして受け取ってほしいと思う。地球温暖化の議論を政治的に利用したり、口論するのを止め、取り返しのつかない状態になる前になんとかするべき」と環境破壊に警鐘を鳴らす。

引用:「ジオストーム」監督、壊滅する都市に銀座を選んだ理由を明かす(映画.com)

何というかこの作品は、デブリン版『不都合な真実』と言うところか?

地球温暖化と言えば、昨年6月アメリカのトランプ大統領が、アメリカの経済と雇用に打撃を与えると主張し、地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」からの離脱を表明しましたね。(離脱は「米国の主権を改めて主張する」意味合いがあるとして「米国第一主義」を強調)

アメリカ出身のデブリン監督は、まるで我が国の大統領の決断(まさに政治に利用?)を憂えてるようだ。実際は2014年から『ジオストーム』は製作に入っていたので、トランプ大統領が大統領選に出馬するよりも前になるので、大統領に対してのメッセージと言うわけではないようだが、『ジオストーム』を観たあとには、この作品があたかもトランプ大統領に対しての“アンチテーゼ”の様に思えてしまうのは、僕だけではないはず。

『ジオストーム』は“人対人”のディザスタームービーだと思うのである。政治的な描写や、陰謀という私欲も描かれている。大統領がダッチボーイの事件の真相を諸外国からの責任の追及を逃れるため、異常の原因を隠ぺいしようと画策するシーンなどは、まさに政治的な思惑に他ならない。そしてデッコム国務長官に関しては、逆に事態を明るみにさせて責任を大統領に被せ辞任させる。そして自分が次期大統領に、ダッチボーイの管理を延期させた上で、ダッチボーイの兵器利用を企む。しかも主要国をジオストームで壊滅させることまで企んでいるわけです。政治的な陰謀です。

実は『ジオストーム』、映画批評集積サイトのRotten Tomatoesによると、批評家支持率は10%、平均点は10点満点で3.4点とかなり低い。批評家筋では酷評されている、お世辞にも評判のいい作品ではない。ただ人の好みは千差万別、以前に批評を鵜呑みにして映画館には観に行かず、後日レンタルで観たら凄くおもしろかった、という経験を何度となくしているので、興味があったならば是非映画館へ足を運んでもらいたい。僕的には、結構楽しめた面白い映画だったし・・・。

あ、本作品の日本語吹き替え版で、ブルゾンちえみが、美人のシークレットサービスでマックスの恋人役のサラ・ウィルソン(アビー・コーニッシュ)の吹替をやってるんだけど、YouTubeで観る限りでは、結構上手。合ってますホントに。ブルゾンちえみ新境地開拓って感じです。映画館では字幕版を観たので、レンタルがリリースされたら、日本語版で観てみようと思います。