『ボヘミアン・ラプソディ』

鑑賞日:2018年11月11日(日)

鑑賞場所:MOVIXつくば

かなり遅いレビューします。

Queenの栄光とフレディの孤独(あらすじ・ネタバレ)

1985年7月13日、英国のウェンブリースタジアムでは、20世紀最大のチャリティライブイベント「ライブエイド」が開催されていた。そして今「QUEEN」のボーカル、フレディ・マーキュリーは、大観衆の前へと飛び出そうとしていた。

時代は遡り1970年。ウエストロンドンに住むフレディ(本名:ファルーク・バルサラ)は厳格な父と対立する繊細な青年。ある夜ライブハウスに行くと「スマイル」というバンドが演奏をしており、フレディは彼らに興味を持つ。そしてボーカルが脱退するのを機にフレディは、バンドメンバーのブライアン・メイとロジャー・テイラーに自らを売り込む。フレディの歌声を気に入ったブライアンとロジャーは、フレディの「スマイル」加入を歓迎する。その時に出会ったメアリーという女性にフレディは運命を感じ、後にパートナーとなるのだった。

フレディはアートスクールで芸術を学んでおり、ブライアンはロケット工学者、ロジャーは歯医者の資格を持ち、ジョンは電気技師のスキルを持つインテリの異色なバンド「スマイル」は、フレディの発案で後に「QUEEN」と改名する。

その後、エルトン・ジョンを有名にした実績を持つ名プロデューサー、ジョン・リードとの出会いがQUEENの飛躍のきっかけとなり。後のキーパーソンでQUEENのマネージャーとなるポール・フレンターとも出会う。国営放送BBCの音楽番組の音楽番組に“口パク”出演し、そこで披露した「キラークイーン」が注目されるのだった。1975年、フレディがメアリーにプロポーズした朝、米国ツアーが決定する。全米各地を巡りツアーは大成功に終わる。またこの頃からフレディは気になる男性を目で追いかけるようになっていた。

帰国後、彼らは次のアルバム製作に着手し始める。ウェールズの田舎のスタジオに泊まり込みでアルバム「オペラ座の夜」の収録が行われた。メンバーは、お互いに指摘しあい衝突しながらも、次々と楽曲は完成していきます。ある夜、フレディはメアリーに捧げるために書いたラブソング「LOVE OF MY LIFE」を作っていましたが、その時、傍らで聴いていたマネージャーのポールが急にフレディにキスをします。「勘違いするな、君はただの仕事仲間だ」と言うフレディだったが表情は裏腹でした。

いよいよ「オペラ座の夜」のメインの曲となる「ボヘミアン・ラプソディ」の収録が始まった。ボーカル、各人のコーラス、楽器パートを収録し、トラックダウンを繰り返し、オペラとバラードとロックが融合し様々な表情を見せる唯一無二の名曲が完成した。

しかしプロデューサーのレイは「演奏時間が6分と長いこの曲はラジオにかけられないし、売れるわけがない!」と「ボヘミアン・ラプソディ」に難色を示し、「マイ・ベストフレンド」をアルバムの目玉にしようとしますが、メンバーは反対。この騒動がきっかけで結局レイと決別してしまいます。その後フレディの迷案で、発売前の「ボヘミアン・ラプソディ」をラジオでゲリラ的にオンエア。評論家や雑誌等のメディアには不評だったが、翌年には人気の楽曲となっていました。

世界各地で順調にライブをこなす、QUEENの人気はうなぎ上り。そんな絶頂の中、フレディの私生活では暗雲がたちこめていた。様子の異変に気付いていたメアリーはフレディを問い詰めます。そしてフレディは、自分がバイセクシャルであることを告白するが、メアリーは「あなたはゲイよ」と言い放つ。その後二人は離婚してしまうのだった。

この頃から、フレディは角刈りで上半身裸もしくはタンクトップというゲイっぽい格好でのパフォーマンスに変わっていきます。そんなフレディに対して、他のメンバーは違和感は感じながらもQUEENの活動は続いていく。ある日ブライアンの閃きで、スタジオのスタッフやメンバーの奥さんなどみんなで足踏み(2回)と手拍子(1回)を繰り返すリズムを奏で始めます。するとどんどんその場が盛り上がっていきます。そして新曲「ウィー・ウィル・ロック・ユー」が誕生。ライブでは大人気の定番曲になっていました。

どんなバンドの活動においても曲作りのコンセプトは揉めるもで、QUEENも例外ではなかった。メンバー同士の意見の対立など、侃々諤々な議論が起きていた。そんな中で、「地獄へ道連れ」や「レディオ・ガ・ガ」など初期の曲では無かったシンセサイザーを多用した曲やディスコ調の曲などもリリースしていく。フレディにソロの話が舞い込んだのもその頃だった。当初フレディは、自分にとって「QUEENは家族」だとして心の中で葛藤していた。

ソロ活動とQUEEN、迷うフレディは私生活では、心に安寧を求めるが如く、同性愛者が集うコミュニティに頻繁に顔を出すようになっていた。そんな生活においてどっぷりとつかるフレディにエイズの魔の手が忍び寄り・・・、彼は破滅への道を歩み始めていました。メンバーたちも心なしか態度がよそよそしくなっていき、フレディは孤独になっていきます。

ある日、フレディはメンバーの前で、ソロデビューの契約をしたことを話します。メンバーは動揺を隠せず、ロジャーは「空港にいたのを拾ってやったのに!」と怒鳴り、「お前らこそ、俺がいなけりゃただの歯医者に天体学者に電気技師だ」とフレディは反論、ブライアンは彼に「君が思っている以上に、君には俺たちが必要だ」と言うが、フレディは「俺には誰も必要ない」と吐き捨て、彼らは決別してしまうのだった。

ソロ活動を始めたフレディ、仕事と私生活においてパートナーとなっていたポールもQUEENから離れてフレディについていた。フレディの作る曲をポールは褒めるのだが、フレディには何か物足りない。フレディは、夜はゲイ仲間を家に呼び、それ以外はピアノと向き合って作曲活動の日々。そんなフレディの身体をエイズがどんどん蝕む様になり、咳にも血が混ざり始めていました。ポールはフレディへの独占欲が強く、元妻のメアリーのフレディへの何度かの電話もをしましたが、ポールが代わりに出て「今彼は忙しい」とあしらうなど、外からの情報をシャットアウトするようになっていた。そんなある日、1985年7月にアフリカの飢餓を救うための今世紀最大のチャリティコンサートイベント「ライブエイド」への出演オファーがQUEENに来ている情報を受けるのだが、その情報はポールで止まってしまうのだった。

「ライブエイドはどうするの?」。フレディが「ライブエイド」の出演依頼を知ったのはポールではなくメアリーからだった。またメアリーは今の恋人との子供を妊娠したことも同時に告げる。ショックを隠せないフレディの元に、ポールがゲイ仲間を連れて戻って来た。帰宅したポールを避けるようにメアリーはフレディにメッセージを残して家を出ていきます。そのメッセージとは、「私たちの声があなたに届いていない」ことを自分が見た夢に例え、そして「私やバンドのメンバーは家族よ。何が大事か考えて」とというものでした。憤慨したフレディはライブエイドのことを言わなかったポールを責め、「二度と顔を見せるな」と追い出すのだった。

その後フレディは、メンバー3人との話し合いの場を設けます。フレディはメンバーに謝罪し、そして「俺には君たちが必要だし、君たちも俺が必要なはずだ」とアピールします。3人は一度フレディを部屋から外させます。部屋に戻ったフレディに対して、メンバーは「これからはどの曲もQUEEN名義でギャラも平等だ」と言います。フレディはそれを快諾しQUEENは復活しました。そしてライブエイドの話になった時、ブランクを気にするメンバーに対して、フレディは「出なかったら一生後悔すると」いい、一同は出演を決めました。

ライブエイドまで1週間に迫ったある日の練習中、フレディはメンバーたちに自分はエイズであることを告白します。「ただ、このことで僕を哀れんだり、怒ったり、僕を退屈させるのは時間の無駄だ。何があってもステージに立つ。そのために生まれてきた。」と決意を述べるのだった。「フレディ、君は伝説だ」と言うロジャーに対し、「ああそうさ、”僕たち”がね」とフレディは返し、メンバーの機運は絶好調に達します。

ライブエイド当日、テレビではライブエイドの主催者ボブ・ゲルドフが「100万ドルの寄付を目指している。」と語っています。久しぶりのフレディの実家では、フレディが両親にゲイであることを告白。両親はフレディのセクシャリティを認めます。フレディはライブエイドの趣旨(チャリティイベント)を説明し、父に「父さんの言ってた善き行いだ」と言って父は認め長年の親子の確執が解けていくのでした。

ライブエイドの会場であるウェンブリー・スタジアムでは、約8万人の観衆で興奮に包まれていた。そしてQUEENが登場すると、観客のボルテージは一気にマックスに達します。大歓声の中、フレディは「ボヘミアンラプソディ」を歌い出します。「レディオ・ガ・ガ」、を熱唱しながら生き生きとしたパフォーマンスを繰り出すフレディにメンバーの演奏も触発され、QUEENは最高のパフォーマンスを披露します。舞台裏ではQUEENの出番が来てから電話が殺到し、一気に100万ポンド超えの寄付が集まるのだった。フレディは観客に向かって「エ~~オ!」「エ~オ!」とコール&レスポンスを繰り返しボルテージを上げていきます。「ハマー・トゥ・フォール」、そして最後は「伝説のチャンピオン」を会場一体で熱唱、スタジアムの熱気は最高潮に達します。

パフォーマンスをやり切ったOUEENは、全員ステージ中央に集まり、観客に手を振り感謝の意を表す。「お別れだ!愛してる!」と叫ぶフレディ、ステージをはける前にブライアン、ロジャー、ジョンの方を振り返るのだった。

演奏シーンを観るだけで泣ける・・・

映画「ボヘミアン・ラプソディ」は、「えっ、何でここで」という感じで泣ける。ラスト20分のライブエイドのシーンのシーンは、鉄板で泣けるのだけど、他にも涙腺崩壊シーンが随所にある。僕の場合はフレディがQUEENの前身グループのスマイルに加入した直後のライブでの「炎のロックンロール(Keep Yourself Alive)」を歌うシーン。もう、このライブシーンを観ているだけで訳も分からず涙が・・・。その後も「ボヘミアン・ラプソディ(Bohemian Rhapsody)」のレコーディングシーンや、ブライアン・メイの発案でメンバーとその仲間たちで手拍子と足踏みでリズムを作る「ウィ・ウィル・ロック・ユー(We Will Rock You)」の楽曲誕生シーンなど、何故かパフォーマンスのシーンで泣けるのだ。逆に、フレディの孤独や苦悩を描くストーリーの本筋では、驚くほど冷静に涙もなく観ていました。

でもきっと、本筋のストーリーが伏線となって、ライブシーンが涙モノの感動を生んでいるのだろうなぁ。とにかく最近の映画では、一番涙腺が緩んだ映画でした。

映画「ボヘミアン・ラプソディ」おこぼれ情報アレコレ

出演者や関係者のインタビューなどから拾った情報や、気が付いたことをいくつかピックアップしてみました。

ライブエイド演奏シーンの完全版があるという噂

ブライアン役のグウィリムが「ライヴ・エイドでは、公開版は6曲のうち3曲(実際には4曲)が使用されていますが、実際には全曲撮ったんですよ。全曲版のバージョンもあるんです」と明かすと、フレディ役のラミも「でもカットされちゃった。近いうちに観られると思いますよ。みんなもね。後から公開されるって」と続ける。

引用:『ボヘミアン・ラプソディ』ライヴ・エイドのシーンは全曲フル版が存在、「近いうち観られると思う」 ─ 「愛という名の欲望」バスタブ作曲シーンも撮影(THE RIVER)

ワクワクするような情報だけど、もしこの話が本当ならば、どのタイミングで「ライブ・エイド」のコンプリート版を観ることが出来るのか? 後日発売されるBlu-rayやDVDの特典映像とかで観れるのかな? もしくはディレクターズカット完全版などと銘打ってリリースされるかも?(完全な憶測だけどね・・・)

エイズ告白のタイミングが事実とは違う件

映画「ボヘミアン・ラプソディ」は、一見フレディの伝記のようだけど、厳密にはノンフィクションに近いフィクション映画だ。ストーリーの演出上、事実とは異なる部分がいくつかあって、その一つとして・・・。

ライブ・エイドが開催された1985年の時点で、フレディ本人は自らが「HIVに感染しているかも?」という不安はあったかもしれないが、本人が感染を認識したのは1987年頃だという(パートナーのジム・ハットン談)。またメンバーのブライアン・メイのインタビューによると、フレディがメンバーにHIV感染を明かしたのは、彼の死の直前だったと言っている。要するに、劇中での告白のタイミングと、事実とは異なるのだ。

明らかに、劇中で最高の盛り上がりを見せる「ライブ・エイド」に向けての演出だ。

「ボヘミアン・ラプソディ」殺人事件

この映画のタイトル「ボヘミアン・ラプソディ」は、言わずと知れたQUEENを代表する名曲だ。2002年にはギネス・ワールド・レコーズ社が行ったアンケート「英国史上最高のシングル曲は?」で、「イマジン」や「ヘイ・ジュード」「イエスタディ」を抑えて1位を獲得。2004年にはグラミー殿堂賞を受賞、そして2018年にはYouTubeなどで再生回数が16億回を超え、全世界で最もストリーミング再生された楽曲となった。

そんな超有名な名曲だけど、歌詞の内容や、当時では考えられないほど多くの音を重ねた多重録音の方法など、謎な部分が多い。2002年にNHK BSで放送された「世紀を刻んだ歌 ボヘミアン・ラプソディ殺人事件」は、三文推理芝居仕立てで“ボヘミアン・ラプソディ”の謎解きを進めていくのだ。この作品が昨年の年末にNHKで再放送された。

16トラック録音が主流だった当時、「ボヘミアン・ラプソディ」は24トラックで録音していて、現存ずる唯一のマスターテープと今どきのミキサーを使った音源分析を披露していた。(音を重ね過ぎたせいでマスタテープは擦り切れ寸前なのだそうだ)

歌詞の謎解きでは「Mama, just killed a man(ママ たった今、人を殺してきた)Put a gun against his head(あいつの頭に銃口を突きつけて)Pulled my trigger, now he’s dead(引き金を引いたらやつは死んだよ)」で始まるバラードパートが何故こんなショッキングな歌詞なのか?一体何を意味するのか?また、タイトルの「ボヘミアン・ラプソディ」が何故歌詞に登場しないのか?など、おかしな推理ドラマが展開する。とても面白い番組だった。最近までYouTubeにアップされていたけど今は削除されてしまったのか観ることが出来ないのが残念です。あ、僕は番組を録画したのでいつでも見返すことが出来るけどね^^

5か月目に突入した「ボヘミアン・ラプソディ」

今年(2019)のアカデミー賞では、主演のラミ・マレックが主演男優賞の受賞をはじめ、編集賞・音楽編集賞・録音賞と4冠。話題はまだまだ尽きず、日本アカデミー賞でも洋画部門で最優秀賞を受賞。国内では足掛け5か月になるロングラン上映を達成している。サントラ盤のCDはもちろん、「グレイティスト・ヒッツ」や「JEWELS」などのベストCDも売れ行きいまだ好調みたいです。

まだまだ、勢いは続きそうですね。