『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち 第四章 天命篇』

  • 鑑賞日:1月28日(日)
  • 鑑賞場所:MOVIX柏の葉

前回『第三章 純愛篇』の衝撃のエンディングから約三か月、待ちに待った感がある『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち 第四章 天命篇』。レビューです。

 

意外なストーリー展開と戦闘の連続(あらすじ)

第十一番惑星の攻防で、波動砲によって、艦隊の戦力を無力化されたガトランティスの先鋒大艦隊が、怒りと復讐にかられヤマトを追う。その眼前にガトランティスによって復活を遂げズウォーダー大帝からヤマト討伐の命を受けたデスラー乗艦のノイ・デウスーラがワープアウト。デスラー砲で大帝の命に背いた大艦隊を葬る。

その頃、ヤマトは先に受信したテレサのメッセージを分析、テレザート星の概要を割り出し、現状のテレザート星の状況などを把握すること成功、古代や真田たちはそのデータをもとにテレザート星への上陸作戦を練り始めていた。

そんな時、瞬間物質移送機にて送り込まれた無数のミサイルが突如ヤマトを包囲する。デスラーによるヤマトとの再戦の口火であった。その正体を知る暇もなく、ワープによって危機を脱したヤマトだったが、艦は次元断層へと迷い込んでしまう。波動エンジンの暴走を引き起こすかも知れない状況の中、デスラーの艦隊はヤマトを正確に追尾、次元断層内でヤマトに攻撃を仕掛けてくる。眼前に現れるアケーリアス遺跡に似た円筒状の天体、ヤマトは死中に活路を見出すべく円筒の内部へ逃げ込む。円筒の内部の空間特性が次元断層の特性と異なることを発見したヤマトは、再度ワープでの脱出を試みる、その時デスラーはデスラー砲をヤマトに向けて発射するが、またも間一髪のところでヤマトを取り逃がす。次元断層が晴れ、そこに残されたノイ・デウスーラを追随するように次々とゲシュタムアウト(ワープアウト)する戦艦。それはデスラーに忠誠を誓うタラン率いる、ガミラスの残存艦隊だった。

デスラーの追撃を振り切り危機を脱したヤマトの艦橋では古代たちが、ワープ直前にヤマトを襲った波動砲と同等の次元エネルギーの爆畜に疑問を抱いていた。そしてキーマンがつぶやく「デスラー砲・・・」と。

先の戦闘で敵がヤマトの位置を正確に捕捉していたことで、ヤマトにスパイがいるのではという疑念が古代たちの中に生じていた。そしてキーマンと透子の挙動を不審に感じていた山本玲は、透子にカマを掛けるのだが、塔子を逃がしてしまう。空間騎兵隊をはじめ艦内総出で透子の捜索をしている最中、補足していたはずの白色彗星が忽然と姿を消す。そして次の瞬間・・・、巨大な質量の物体がヤマトの眼前にワープアウトしてきた。それは先ほど消えた白色彗星だった。白色彗星の荒れ狂う渦の中に引き込まれていくヤマト。

白色彗星の出現、透子の逃走と艦内はパニック状態に陥る中、艦内を逃げる透子に変化が生じ始める。それはガトランティスのサーベラーとヤマトの透子との間に起きた異常な共鳴のようなものだった。結局透子はキーマンによって身柄を確保される。一方ガトランティスでは、「また同じ過ちを繰り返すのか?サーベラー」と言い放ち、異常をきたしたサーベラーをズウォーダー大帝が始末する。サーベラーの死によって白色彗星の攻撃力がダウン、その一瞬のスキをついてヤマトはワープで危機を脱するのだった。

テレザート星を目前にしてヤマトの上陸作戦が開始されようとしていた。テレザート星を完全に封印しようとするガトランティスは、最後の岩盤をテレザート上空に運び封印を実行しようとしている。ヤマトは、その岩盤とテレザート星の間に、空間騎兵隊を中心とした機動甲冑(パワードスーツ)部隊をワープブースターを使って送り込み、テレザート上空にいる艦隊に攻撃を仕掛ける。そして次にヤマトが同じ地点にワープアウトし180度回頭、岩盤を波動砲で破壊し外殻上空に待機するガトランティスのゴーランド艦隊にダメージを与えようとするが、ゴーランドは先に破滅ミサイルを発射し、岩盤もろともヤマトを葬ろうとする。破滅ミサイルによって破壊される岩盤、破壊と同時に巨大なエネルギー乱気流が発生する。破壊された岩盤の岩塊と乱気流でバランスを失うヤマトに対し、ゴーランド艦隊はヤマトに向かってミサイルの一斉攻撃をかけようとしていた。

ゴーランド艦隊では、ゴーランドのDNAを受け継ぐ息子?ノルが、「進攻する艦隊が集中し過ぎるのでは」と進言。が、ゴーランドは事前にズウォーダー大帝から情報を得ていたのか、「ヤマトは何もできない」と言い放ち、集中した隊列のままヤマトへ迫る。

ヤマト艦内では土方が「まだ作戦は生きている」と言い放ち、ヤマトはバランスを崩しながらも艦首を迫るゴーランド艦隊へ向ける。その時、機動甲冑部隊の斎藤始から土方へ通信が入る。「古代の代わりに、あんたが波動砲を撃ってくれ」、「古代は大切な人(イスカンダルのスターシャや沖田艦長)と約束してるんだ。だから・・・」と。対してキーマンが「これはイスカンダルへ旅したものが等しく背負う十字架。自らが呪縛を解かない限りヤマトの未来はない」と言い放つ。そして古代の脳裏には、「古代、覚悟を示せ」という沖田の言葉が響く。迷う古代に対して島が「お前だけが撃つんじゃない、俺も撃つ」と覚悟を示す。そして他のヤマトクルーからも続くように・・・。森雪が不安そうに古代を見つめる中、覚悟を決めた古代は波動砲のトリガーを握る。そして土方からは「館長就任の件、拝命した」と伝えられる(以前から古代は土方に艦長就任を依頼していた)。そしてヤマトはクルー全員の覚悟をのせて波動砲を発射。ゴーランド艦隊は消滅する。

テレザート星では、先行して上陸したヤマトの機動甲冑部隊がガトランティスのザバイバル率いる陸戦部隊と交戦、メダルーサ級戦艦を改造した無人戦車に苦戦を強いられる。一方テレザート星の外殻では外殻岩盤を破壊するために、真田が考案した「波動掘削弾」を設置していた古代たちをめがけて上空から高エネルギー弾が着弾。ヤマト艦内では弾道の分析の結果、前の航海(イスカンダルへの・・・)の時に冥王星で受けた反射衛星砲に酷似していることが判明する。「ガトランティスはガミラス技術兵の捕虜からガミラスのテクノロジーを流用した兵器を多数開発していると」キーマンが説明する。キーマンは反射衛星砲の制御衛星をハッキングし反射衛星砲を破壊する。続いて古代・真田が仕掛けた波動掘削弾によりテレザート星の外殻の破壊に成功する。

テレザート星では、ヤマトの機動甲冑部隊がザバイバルの陸戦部隊を前にして、多勢に無勢と最大の危機に瀕していた。そこに上空から応援に駆け付けた斉藤が、巨大な岩盤をザバイバルの大部隊にお見舞いする。ザバイバルは自ら乗船するメダルーサ級戦艦で攻撃。次々と仲間が倒れる中、斉藤は撤退を指示、そして斉藤は単身でザバイバルと対峙する。一対一の格闘の末に致命傷を負ったザバイバルは、自爆し自ら命を断ってしまう。そしてここにテレザート星上陸作戦は終了を迎える。

テレザート星の深層部、光に包まれた玉の様なものの前に古代・真田・斉藤の三名が立つ。光に包まれた玉は蕾が開花するように開き、一糸まとわぬ美女「テレサ」が現れる。テレサは高次元生命体の集合体で、全時空をも見通せる存在のようだ(真田がテレサに尋ねた)。テレサは古代たちに何を告げるのか?

そして再びあの男が・・・、テレサと古代たちの前に姿を現わす。

真の目的が気になるデスラーの再起

「我々にはない感情、執念を見せてはくれぬか?」と、ズウォーダー大帝からヤマト討伐の命を受けて白色彗星を発ったデスラー。

大ガミラス帝星を支配したアベルト・デスラーは、ヤマトがイスカンダルからの帰路の途中、亜空間においてヤマトによって葬られたはずだったが、いまは以前は宿敵だったガトランティスの元にその身を寄せていた(それまでの過程は定かではないが・・・)。と、白々しく書いているけどこんなのヤマトファンなら周知の事実。前作の「さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち」「宇宙戦艦ヤマト2」をご存知なら、デスラー復活は物語中の最大のイベントだ。驚くことでもないですね。ただ、本作品は前作の単純なリメイク版ではなく、むしろ新作に近い認識もあるくらいのストーリー展開が続いているので、前作の予備知識は逆に邪魔だ。現にデスラーの登場にしてもタイミングが早いのだ。

「え、このタイミングでもう登場?」って感じで、第三章「純愛篇」の最後に登場して、本作品の冒頭より、正体は明かさないまでもヤマトにがっつりと攻撃を仕掛けてくる。そしてまたまた最後には、テレサと古代たちの前に大胆にも単身で現れ復活をアピールする。全く読めない展開に今回のデスラーの真の目的は何なのか?

大胆にして謎。デスラーからは目が離せません。

早くも眼前に出現“白色彗星”

白色彗星がヤマトの眼前に出現するタイミングも想定外。

「さらば宇宙戦艦ヤマト」では、突如眼前に・・・というシーンはなかったものの、「ヤマト2」ではテレザートからの帰路に、白色彗星の突然の出現にヤマトはダメージを受けて足止めを食らってしまうのだけど・・・。

本編の「天命篇」では、「ここで出るか?」というある意味一番のサプライズだったかもしれません。

一度は彗星の内部まで引き込まれてしまうヤマト。そこで見た物は・・・?無数のガトランティスの戦艦。そして中心部にある巨大な質量の物体。解析の結果では火星と同等の大きさと言っていたような・・・。

今回のあまりに早い白色彗星の出現は、ヤマト内で不穏な行動をみせる“透子”とガトランティスの“サーベラー”の関係を描くうえで必然的エピソードだと思えば納得か。

透子とサーベラー

「第三章・純愛篇」において「ガトランティスは生殖機能を持たない創られし人類」とズウォーダー大帝が古代に明かすシーンがある。そんなガトランティスの創られた種族の中で、サーベラーという女性に関して「第四章・天命篇」で、「ガトランティスとは異なる唯一無二の存在、彗星帝国を操るたった一人の白銀の巫女」とズウォーダーが語る。

突如、白色彗星がヤマトの眼前に現れた時、ヤマトの艦内を逃亡していた桂木透子とガトランティスのサーベラーの間に起きた共鳴のようなもの。この共鳴によって透子とサーベラーそれぞれの行動に異変が生じる。そしてお互いの感応波が交錯する、まるで一人の男を取り合うが如く。動揺する二人の心を感じるズウォーダーは「また同じ過ちを繰り返すのか?」とつぶやく。

ガトランティスの情報長ガイレーンは、「純粋体同士が近づき過ぎた・・・」とズウォーダー大帝に進言している。「純粋体?」何それ?

結局、サーベラーはズウォーダー大帝に対して求愛にも似た行動をとり、ズウォーダーの手によって殺されてしまう。それは「愛」を知ると豪語する彼が「愛」を否定する故の行動だったのか?死亡したサーベラーを見てガイレーンは「これで何人の・・・」とつぶやく。

唯一無二の存在、最後の人間、白銀の巫女“シヴァル・サーベラー”とは? ズウォーダーが「また同じ過ちを繰り返すのか?」と言った相手はどうやら彼女のように思える。ズウォーダー大帝とシヴァル・サーベラーの関係は今後さらに語られるかもしれない。そしてシヴァル・サーベラーの記憶がコピーされ代々の巫女(サーベラー)に受け継がれているようだ。(何かあまりうまく説明できてない・・・)

ちなみに透子の精密検査の結果、ヤマトクルー同様の人間(生殖機能も有している)だった。ということはズウォーダー大帝に葬られたサーベラーも然りだったのか?

テレサのメッセージとは?

ゴーランド艦隊とザバイバル陸戦隊、ガトランティスの守備隊を駆逐したヤマト。古代・真田そして斉藤はテレサとの対面を果たす。そしてテレサは古代たちに「ここに来る必要があり、来るさだめだった」と語り掛ける。そしてガトランティスに関しては、「古代アケーリアス人が遺した滅びをつかさどるもの」と明かす。すなわち人類が悪しき者であれば、それを滅ぼすための破壊装置なのだ。

人類とは異なるメンタリズム、白色彗星内と第十一番惑星で垣間見た、圧倒的且つ強大な戦力のガトランティスに不安を抱いていた古代は、「ガトランティスとどのように戦えばいいのか?」「あなたには未来が見えているんでしょう?」とテレサに尋ねるが、「未来を告げれば未来は変わってしまいます」そして「ヤマトとは大いなる和(輪)。輪をつなぐのは縁のチカラ、ヤマトを中心とする輪」と抽象的な言葉で応えた。そしてこうつづける、「縁は育つ、時に痛みを伴いながら・・・」

後にデスラーがヤマトに加担するのは想像つくが、「2202」ではガトランティスとの最終決戦においてヤマトの孤軍奮闘にはならないのではないだろうか?「輪をつなぐのは縁のチカラ・・・」というテレサの啓示が意味するもの・・・。地球と同盟を結んだガミラス、そしてガミラスやガトランティス以外で、ヤマトとかかわった異星人と言えばジレル人だ(「宇宙戦艦ヤマト2199 星巡る方舟」参照)。このジレル人の存在が「2202」のクライマックスにかかわってくるんじゃないだろうか?

そしてついにこの場所に・・・、「久しぶりだね、ヤマトの諸君」ヤマトを追い続けるデスラーが姿をあらわす。

さらにガトランティスに関して

そういえば、ガトランティス人は精神感応能力を有する者がいる。デスラーに同行していたミル、ヤマトに潜り込んでいた桂木透子、そしてサーベラーやズウォーダー大帝など。そしてこの精神感応能力と言えば・・・、思い出されるのが「2202」では出てきてはいないジレル人だ(「2199」と劇場版「2199星めぐる方舟」では出てる)。

ジレルは精神感応能力を持つ者が多く存在する種族で、その能力を恐れた他種族に滅ぼされたが、古代アケーリアス文明の遺跡にしてジレル人の聖地である恒星間播種船「シャンブロウ」に難を逃れた人々がいたことが「星巡る方舟」で明かされている。ん?古代アケーリアス文明の遺跡?

ガトランティスが「古代アケーリアスが遺したもの」、そしてジレルと古代アケーリアス文明との関係、ガトランティスとジレル。この両者、何か関わりがあるのではないか? そういえばガトランティスのサーベラーとジレルのレーレラー・レールってどことなく似ている気もします。しかもレーレラー・レールも巫女だった。

「2202」では古代アケーリアス文明に関係する事象から目が離せないですね。

『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』前半のヤマ的本作品

明らかにされはじめたガトランティスの正体。それでもその全貌までにはまだ及んでいない。今後も古代アケーリアス文明との関わりを軸に明らかにされていくに違いない。「さらば宇宙戦艦ヤマト」では、白色彗星の中から月のような小惑星を半分にした断面に無数の高層ビルが林立している帝国都市(サラダボールにフライドポテトを無数に刺したような・・・)が出現した。今回の「2202天命篇」では、白色彗星に呑み込まれたヤマトが見た物は“火星規模の質量のもの”だった。明らかに以前のものとは違うモノが、あの巨大彗星内に存在している様だ。どんなものが現れるのか現時点では想像も及ばなくて興味が尽きない。

ヤマトに敗れガトランティスに身を寄せ、ズウォーダー大帝の命でヤマト討伐にでたデスラーだが、ガトランティスの監視役ミルを拘束し、旧ガミラス体制のタランの艦隊と合流し独自の行動をとる(ズウォーダー大帝はそれを知っていて見逃している)。そして最後は、テレサと古代たちの前に姿をあらわす。単にヤマトへの復讐であれば、彼らの前に姿を現わさなくても果たせると思うのだが・・・。他に真の目的があるのではと勘ぐってしまいますね。

さて、今回はキーマンが波動エンジンに仕掛けた“反波動格子”に関しては、透子の「しゃべらないでいてあげる」くらいしか触れられていない。惑星シュトラバーゼで明かされた高貴な一族のキーマンだが、ガミラスで高貴な一族だったらデスラーとの何らかの関わりはあるはずだ。キーマンの今後にも目が離せない。

デスラーの復活から始まり、全貌ではないがガトランティスの正体が明かされ、テレザート星でテレサを開放し、メッセージを受けることに成功したヤマト。この「天命篇」は間違いなく前半の重要なポジションを占めるヤマ的なストーリだったと思う。

次回「第五章 煉獄篇」からは地球への復路となるわけだが、古代たちの目の前に姿を現したデスラーとはどうなるのか? そして一足先に地球へと舵をとった白色彗星(ガトランティス)の動向も気になるところ。監督の羽原信義やシリーズ構成の福井晴敏は、「『第五章 煉獄篇』では前半と後半がはっきりと分かれる構成になっている。」と言っていて、おそらく前半は「ヤマトvsデスラー」、後半は「ガトランティスvs地球防衛軍」となるんじゃないか(あくまで僕の推測ですが・・・)。そしてテレサが言った「縁」に関することは劇中で触れていくのか?興味は多くそして尽きませんね。

僕としては、ガミラスのメルダ・ディッツやフォムト・バーガーに出てきて欲しい。

次回「宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち 第五章 煉獄篇」は、5月25日から公開。