エンドロールを見ながら、「久々に胸がスカッとするいい映画観たなぁ」と思ったのがこれ。
映画『ドリーム』です。
都内では9月末からの上映だったんだけど、近所のシネコンでは一か月遅れの10月末からの上映。「おいおい・・・、こんないい映画なんだから上映のタイミング一緒にしろよ!って言いたい。同じ関東なんだし・・・。」
ということで早速レビューを。。。
思わず応援したくなるNASAの中での黒人女性の戦い
1961年、バージニア州のハンプトンにあるNASA最古の研究施設、ラングレー研究所に数学者のキャサリンは計算技師として、友人で同僚のドロシーとメアリーとともに働いていた。ドロシーの地位は黒人女性職員たちのリーダー(主任格)として、メアリーはエンジニアとして。
ソ連に先を越され、アメリカ国内では有人宇宙船計画へのプレッシャーが強まっていた。そんな中、キャサリンは、高い解析幾何学能力を買われ、スペース・タスク・グループへの移動を命じられる。初の黒人女性スタッフであるキャサリンに、グループ内の同僚は奇異の目を注ぐ。
「マーキュリー計画」で、キャサリンは膨大なデータの確認作業を担当するが、渡されるデータは黒塗りの“のり弁状態”。始めは困惑するキャサリンだが、黒塗り部分と明らかになっているデータを駆使し、その計算式の想定条件を推測し、より適切な計算式と答えを黒板に書き出して証明する。こうしてキャサリンの能力は次第に認められ、グループ内はもちろん責任者のアルにも届く。アルは、今後すべての情報を彼女に開示ようポール(キャサリンの上司)に命じる。
ある日アルは、キャサリンが必要なときに40分近くもいなくなることに腹を立て、本人を問い詰める。するとキャサリンは、トイレを使用するために、元職場のある建物まで走って戻り、有色人種専用のトイレまで行っていたと話す。またキャサリンは、服装規定への不満、彼女一人のための有色人種専用のコーヒーポットなど、遂に感情を爆発させる。次の日、アルは大勢の職員の前で「有色人種専用トイレ」のカンバンを壁から叩き落とす。そして今後、トイレは人種の区別無く、一番近いトイレを使用するように伝えます。
キャサリンは、大気圏突入後に着水するカプセルを迅速に救助回収するため、着水位置を割り出す計算を担当してたが、会議がある度に条件が変わり、その都度、最初から計算し直さなくてはならなかった。キャサリンはアルに会議への参加を直談判するが、ポールは前例がないと反対、しかしアルは会議への参加を承諾します。会議では、キャサリンに奇異の目が集まるが、必要な答えを的確に導く彼女に、会議の雰囲気も一変する。
その頃メアリーは、チームリーダーの後押しもあり、正式なNASAエンジニアになるために奔走していた。が、学位が足りず、その学位を取るためには、白人専用の大学で授業を受ける必要があった。メアリーは学校に編入するため、裁判所に申請し裁判所命令を持って学校に編入しようと試みる。ただ人種差別の壁を取っ払うのは一筋縄ではいかない。しかしメアリーは、裁判官の心を動かす素晴らしいプレゼンテーションを披露し、夜間クラスの参加を勝ちとる。
高度な計算を必要とする今後の宇宙開発計画のために、IBMのスーパーコンピュータがNASAに搬入されるが、うんともすんとも動かず、IBMの技術者は頭を抱えていた。そんな状況を知ったドロシーは、独学で得たフォートランの知識を活かし、コンピューターを起動させる。その後ドロシーに異動の辞令が届くと、彼女は20名の部下を引き連れ異動する。逆に、IBMが稼働したことでキャサリンは、元の部署に戻ることになってしまう。
ジョン・グレン宇宙飛行士のロケット打ち上げ当日、IBMが導き出した着地地点に異常があることが発覚。ジョンに連絡し意見を伺うアルに対して、ジョンは「キャサリンが確認して正しいと認めれば、打ち上げOK。」と答える。
アルはキャサリンに確認計算を依頼、彼女は素早く確認を済ませ、答えを持ってコントロール室に戻るが、キャサリンの入室は許可されなかった。失意のまま戻ろうとするキャサリンだったが、アルが彼女をコントロール室に案内する。正しい着地地点を伝えられたジョンは、キャサリンに感謝しロケットに乗り込み、ロケットの発射は無事成功する。
ロケットのカプセルは、地球の周回軌道をまわり始めるが、耐熱防御壁の異常を知らせる警告灯が点灯。安全の為、7回の周回軌道を切り上げ、3回で戻るように変更されます。不安に包まれる中、着陸カプセルは、無事にバハマ沖着水に成功する。歓喜につつまれるコントロール室。アルとキャサリンはガッチリと握手を交わします。そして「次は月面着陸だ。」と、アルはキャサリンに告げた。
改めて驚く黒人女性に立ち塞がる障壁
映画「ドリーム」は、NASAで宇宙開発のために多大な功績を残した黒人女性達の活躍を描く、実話をもとにした映画ですが、見方を変えれば、人種差別という障害に毅然と立ち向かった、勇気ある黒人女性達の物語でもあります。
世間では、キング牧師が報道で登場するなど、黒人の開放運動が盛んな社会情勢が、この映画のバックグラウンドにある。
- 有色人種専用トイレ
- 有色人種専用のコーヒーポット
- バスの有色人種専用の乗降口
- 「前例なし」という理由
- 図書館で白人専用エリアの本が借りられない
- 白人のみの大学で学位がとれない
劇中目立った差別的事項を挙げてみたが、これらの障壁を彼女たちは、持ち前のバイタリティとプライドで切り開いていく。まさに戦いの物語だった。
「1961年のハイウェイで白人警官に先導される黒人女性3人・・・奇跡だわ」
「私たちが成功しそうになるたびに壁ができる」
吐き捨てるような彼女たちのセリフからも、この時代の問題が伺える。また、人種的な差別以外にも、男女の性別的差別も見え隠れしていた。この『ドリーム』は、そんな時代のアメリカの物語なのだ。
ともすれば深刻になりがちなこれらの問題も、この映画では彼女たちを通して、あくまで前向きに、時にはコメディ的に表現している。映画を観たあとに感じた爽快感は、そんなところからも来ているのかもしれません。
その後の三人の活躍は
マーキュリー計画の後、NASAではコンピュータが、計算士の職を奪うことになります。その後キャサリンは、コンピュータ解析部署に異動して活躍、アポロ計画やスペースシャトル計画に携わることになる。またドロシーは、プログラミング部署の主任として活躍。そしてメアリーは正式にNASAのエンジニアとして活躍していきます。
そして2015年、キャサリンは大統領自由勲章を授与、さらに翌年2016年には、キャサリンの功績をたたえてラングレー研究所内には、彼女の名前を冠された研究所が存在することになる。
タイトル(邦題)に関して
これウィキペディア情報です。
『ドリーム』が日本での公開にあたって、当初のタイトル(邦題)は・・・『ドリーム 私たちのアポロ計画』
マーキュリー計画が描かれた映画なのに、何故アポロ計画なのか?
当初、本作の日本語題は『ドリーム 私たちのアポロ計画』と発表された。しかし、「マーキュリー計画を扱った作品なのに、なぜアポロ計画なのか」という主旨の批判がSNS上で相次いだ。こうした批判に対し、日本での配給を担当する20世紀フォックスは、「日本の観客に広く知ってもらうための邦題として、宇宙開発のイメージを連想しやすい『アポロ計画』という言葉を選んだ」「ドキュメンタリー映画ではないので、日本人に伝わりやすいタイトルや言葉を思案した結果」とコメントした。・・・中略・・・こうした批判を重く見た20世紀フォックスは日本語題を『ドリーム』に変更すると発表した。
なめんなよ!!
思わずこの映画も見たくなる
マーキュリー計画と言えば、『ライトスタッフ』という映画があります。
この映画は、マーキュリー計画の為に選抜された精鋭パイロット7人(マーキュリー・セブン)と、その資質はあるものの、学歴等が障壁となって選抜されなかったテストパイロットの物語。
テストパイロットのイエガーは、音速と高高度に挑み続ける勇敢なパイロット。一方マーキュリー・セブンの面々は、国家の重圧(スプートニック・ショック)と闘いながら有人宇宙飛行に挑戦していく。別々の生き方の中に勇気を持って行動する者たちを称えた物語である。
『ライトスタッフ』は1983年に上映された映画。もう既に34年もの月日が過ぎているんだけど、全然古さを感じないというか、「良くできた映画は色褪せないなぁ」って思います。
『ドリーム』が、マーキュリー計画を陰で支えるスタッフの物語に対し、『ライトスタッフ』はそのパイロット(マーキュリー・セブン)にスポットを与えた物語。
大好きな映画のひとつでもあって、僕は今でも年に一回程度は最低観ている気がします。。。^^;