昨年、石川佳純・吉村真晴のミックスペアが、世界卓球選手権2017の混合ダブルスで金メダルを獲得し、歓喜の感情をハグで思い切り表現していた光景は記憶に新しい。そんなタイミングの中、昨年の秋に公開された、新垣結衣・瑛太主演の映画『ミックス。』は、新垣結衣扮する、卓球にトラウマを抱えさらに男に捨てられ田舎に逃げ帰った元天才卓球少女の富田多満子が、瑛太扮する、家族に捨てられた元プロボクサーの萩原久や、所属する卓球クラブの仲間たちが、様々な悩みを抱えながらも、卓球の混合ダブルス(ミックス)を通じて小さな奇跡を起こす、恋と人生の再起をはかる物語。
そんな『ミックス。』のDVDがリリースされたので早速購入。劇場での鑑賞以降、改めて楽しませてもらった中で、興味深かったり気になった部分があったので紹介しようかと思いまして。。。
選手のプレースタイルを表すあの暗号のような表記の意味
卓球のシーン。それぞれの選手をスーパーで紹介するカットがある。その紹介のスーパーには、選手の名前とその下に「右シェーク裏粒カット主戦」という暗号のような表記がクレジットされている。「何これ、どういう意味?」って感じですが、これは選手のプレースタイルを表すものらしい。これを一目で理解できる人はかなりの卓球通といえるらしい。
例えば、「ミックス。」の主人公である富田多満子のプレースタイルのモデルにもなっている、長年日本の女子卓球を牽引し続けてきた“福原愛”のプレースタイルはというと、「右シェーク裏表前陣速攻」という形で表される。これを紐解くと・・・、
「①右、②シェーク、③裏表、④前陣速攻」と4つのカテゴリーから構成されていて・・・、
- 右利き
- グリップはシェークハンド
- 裏ラバー(表面)、表ラバー(裏面)
- 前陣速攻型のプレースタイル
ということになる。
1の利き腕は説明するまでもないですね。2のグリップはラケットの持ち方を表しています。握手するように握る“シェークハンド”、ペンを握るような“ペンホルダー”を表している。3はラケットに貼ってあるラバーの種類を表し、使用するラバーの種類でもドライブ主体かカット主体か、攻撃型か守備型かなど読み解くことが出来る。そして本来のプレースタイルを表すのが4。
グリップとラケットの種類(2)
グリップの名称はラケットの種類から由来しています。ラケットの種類は、大きく分けて二種類。
- シェークハンド
- ペンホルダー
1のシェークハンドは基本的に両面にラバーを貼り、フォアとバックで面を使い分けて打つ。2のペンホルダーは基本的に表面のみラバーを貼り、フォアとバック共に表面で対応する。ただし裏面にもラバーを貼る中国式ペンホルダーというのもあるらしい。
僕が中学・高校時に遊びで卓球をやっていた時は、ペンホルダーが主流だったけど(マイラケットもペンホルダーでした)、今はシェークハンドが主流のようです。
ラバーの種類(3)
前述したとおり、使用するラバーでもプレイヤーのスタイルを読み解くことが出来る。ラバーの種類は大きく分けて3種類。
- 裏ソフトラバー
- 表ソフトラバー
- 粒高ラバー
最もポピュラーなのが、1の“裏ソフトラバー”で初心者の殆どが使用しているらしい。裏ソフトラバーの特徴は、表面が平らなで回転がかけやすく、様々なショットをコントロールすることができる。一方で相手のコントロールの影響も受けやすいという危険もはらんでいる。
2の“表ソフトラバー”は、粒状のラバー面が特徴で、表ソフトラバーはボールがラバーに当たってから離れるまでの時間が非常に短く、ボールの初速を加速させる。裏ソフトラバーと比較し、プレイングに左右されず、コントロール性は低いが、素早い試合展開の速攻型、スピード重視のプレイヤーには最適なラバーのようです。
3の“粒高ラバー”は、表ソフトラバーと同様で表面が粒状のラバーだが、表ソフトラバーと比較して粒子が高く、ボールの回転の影響を受けづらいラバーで、相手の回転に対して逆の回転をかけることができる。カットマンや卓球での戦略型プレイを楽しみたいプレイヤー向けのラバーといえるようです。
ポジションとプレイスタイル(4)
卓球では、卓球台に近い順に“前陣”、“中陣”、“後陣”とポジションを分け、選手のプレースタイルを“前陣速攻”、“ドライブ主戦”、“カット主戦”と大別します。これを踏まえたうえで・・・。
“前陣速攻型”は、卓球台近く(前陣)にポジションをとり、速いピッチでショットを繰り出して相手を打ち負かすスタイル。福原愛、伊藤美誠選手がこのタイプに該当する。
“ドライブ主戦型”は、中陣から後陣にポジションをとり、ドライブショットをメインに攻めるスタイル。前陣にポジションをとる場合も多く、前陣速攻との差はあまりない。水谷隼(オールラウンド型に属することもある)、丹羽孝希、吉村真晴、石川佳純選手がこのタイプ。
“カット主戦型”は、後陣にポジションをとり、主に強いカット回転をボールにかけ、粘り強く打ち返し、相手のミスを誘う「守備型」のスタイル。
「ミックス。」に登場する選手のプレースタイル
フラワー卓球クラブ
- 富田多満子(新垣結衣):右シェーク裏表前陣速攻型
- 萩原久(瑛太):左シェーク裏裏ドライブ攻撃型
- 吉岡弥生(広末涼子):右シェーク裏粒カット主戦型
- 佐々木優馬(佐野勇人):右シェーク裏粒カット主戦型
- 落合元信(遠藤憲一):右ペン裏ドライブ攻撃型
- 落合美佳(田中美佐子):右シェーク裏表ドライブ攻撃型
渚テクノロジー卓球部
- 江島晃彦(瀬戸康史):右シェーク裏裏オールラウンド型
- 小笠原愛莉(永野芽郁):右シェーク裏裏ドライブ攻撃型
中華料理店「楊楊苑」
- 張(森崎博之):右ペン裏裏ドライブ攻撃型
- 楊(蒼井優):右シェーク裏裏ドライブ攻撃型
高校生(相模原第一高)ペア
- 田所いろは(伊藤美誠):右シェーク裏表前陣速攻型
- 東聖哉(木造勇人):左シェーク裏裏ドライブ攻撃型
大学生(横浜学園大学)ペア
- 徳島竜司(吉村真晴):右シェイク裏裏ドライブ攻撃型
- 松田萌絵(浜本由惟):右シェイク裏裏ドライブ攻撃型
神奈川県警卓球チーム
- 山下誠一郎(吉田鋼太郎):右ペン表前陣速攻型
- 佐藤風香(中村アン):右シェーク裏裏ドライブ攻撃型
岩田卓球道場
- 後藤田 タケル(鈴木福):左シェーク裏裏ドライブ攻撃型
- 日高 菜々美(谷花音):右シェーク裏粒異質型
卓球教室「モンロー」
- ジェーン・エスメラルダ(生瀬勝久):右シェーク裏表前陣速攻型
各選手のプレースタイルを理解して、「ミックス。」を楽しんで観るのもいいかもです。
どっちが先?
昨年の6月、石川佳純・吉村真晴のミックスペアが、世界卓球選手権2017の混合ダブルスで金メダルを獲得した。まるでその年の10月に封切られる『ミックス。』の封切りを祝うかのような出来事だった。本当に偶然のような出来事なのだけど、世界卓球選手権の金メダルの方が先だった為、『ミックス。』が話題性をあてに後追いで製作されたかのように勘違いされている方がいるようだけど、撮影は世界卓球選手権よりも前からクランクインしている。
しかも卓球のミックスダブルスは、2020年の東京オリンピックの種目にもなった。偶然に偶然が重なった、2017年は『ミックス。』の年といっても過言ではないような。
『ミックス。』の小ネタ?
周知の事実というわけではないけど、「これは、もしや・・・ネタ?」と思えちゃったりした部分を紹介しますね。
1,『ピンポン』のペコが・・・
この『ミックス。』が上映されるまで、卓球の映画といえば、窪塚洋介主演の『ピンポン』だった。その窪塚洋介ではないけれど、「この髪型はまるでペコじゃないかぁ」と思えるような奴が、多満子の元カレ江島が所属する渚テクノロジー卓球部にいます。(いるだけで実際のプレーは無し)
2,『愛と青春の旅立ち』のようなシーン・・・じゃないけど
元鞘を目論む未練たらたら男の江島が、多満子の前に再度現れ復縁を迫ったおかげで、多満子はハギ(萩原久)とのペアを解消してしまう。昨年の雪辱を誓った全日本卓球選手権大会の当日、多満子の働く缶詰工場にハギが迎えに行くシーン。
突っ込みどころ満載だと思うが、何となく『愛と青春の旅立ち』のラストシーンを思い起こさせるような・・・。
3,福原愛の幼少期を完全再現?
富田多満子は福原愛がモデルになっているそうです。多満子の幼少期の回想シーン、そこにはあのころの「愛ちゃん」がいます。
4,ガングロの新垣結衣
ガッキーの面影はまるでなし。必見。
5,冒頭にみくりさん出現
「実は私、結婚するの」
失恋を妄想で茶化し倒そうとする多満子のシーンから始まる『ミックス。』(結局失恋の悲しみに押しつぶされますが・・・)。まるで『逃げ恥』で、痛恨のミスを妄想で茶化し倒そうとする、みくりのようです。
SHISHAMOの主題歌『ほら、笑ってる』が心に刺さる
劇中歌(主題歌『ほら、笑ってる』と挿入歌『サボテン』)を担当しているのがSHISHAMO。
『ミックス。』のエンディングロールで流れるのが『ほら、笑ってる』。これがとにかくいい。映画を観終わった直後、心にしみるというか刺さるというか。。。主人公の多満子がエンドロールの向こうにまだ居るかのような感覚をおぼえる。
惨敗から再度雪辱の為に、翌年の全日本卓球選手権に臨むまでの一年間、多満子をはじめフラワー卓球クラブのメンバーの奮闘する様子を盛り上げるのが『サボテン』だ。すごくSHISHAMOっぽく、ドライブ感があって、フラワー卓球クラブのメンバーの日常のみならず、観ている僕らまで引っ張ってくれる感じがする。『サボテン』一曲が流れる中に一年間を凝縮している演出も興味深い。
新垣結衣コメント
「がむしゃらで一生懸命で熱い青春のようだったり、辛い過去を乗り越えて大きくしっかりと前に踏み出したような穏やかな力強さだったり、多満子達のストーリーをより素敵にストレートに伝えてくれる2曲です。本編を観て、エンディングで『ほら、笑ってる』が流れた時は胸がキュンと熱くなりました。SHISHAMOさんの演奏と歌声が私達のとても近くで寄り添ってくれるようでした。」瑛太コメント
「劇中歌の「サボテン」、主題歌の「ほら、笑ってる」ともに歌われているのは躓いても前を向く女性の姿で、映画『ミックス。』もまた、そんな登場人物たちを描いた物語です。 是非、SHISHAMOさんの音楽と共に、何度躓いても立ち上がって前を向く、ガッキーと僕を劇場に観に来て下さい!」
引用:『ミックス。』公式ホームページより
『ほら、笑ってる』
『サボテン』※劇中歌はアコースティックバージョンではありませんが・・・