『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち 第六章 回生篇』

鑑賞日:2018年11月3日(土)

鑑賞場所:MOVIXつくば

子を思う親ゆえの“悪魔の選択”をとってしまったヤマト航空隊長・加藤三郎。前回『第五章 煉獄篇』での何とも後味の悪いエンディングから約半年、一切の機能が沈黙してしまったヤマトハルクどうなるのか?『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち 第六章 回生篇』。レビューです。

宇宙の存亡をかけたガトランティスとの終わりなき死闘(あらすじ)

アンドロメダを旗艦とする地球防衛艦隊がガトランティス本星の攻撃に苦戦を強いられる中、その間にワープアウトして割って入ったヤマト。反波動格子を活用した“トランジット波動砲”をガトランティスに放つ瞬間、航空隊長の加藤が反波動格子起動という“悪魔の選択”を実行。ヤマトの波動システム沈黙し、なすすべなく彗星帝国の重力圏に引かれ沈んでいった・・・。土方艦長はクルーの離艦を指示する。しかし短時間での緊急離艦のため全員は離艦できず、土方艦長をはじめ、古代戦術長、森船務長、航空隊の山本、空間騎兵隊の斎藤隊長と永倉、そしてキーマンなどはヤマトに残されたまま白色彗星に呑まれていく。

からくも離艦できた真田、島、南部、相原たちは、波動実験艦「銀河」へと移乗。銀河は次世代の航宙艦艇としてヤマトの波動システムを含む本体をコピーした同型艦。ヤマトが地球帰還後に、その役目を終えたコスモリバースシステムを移設し、その能力の研究と利用に特化した宇宙探査用に真田が設計したものだった。だが防衛軍はそれをも戦線に投入し、時間断層で艦隊の増強に明け暮れる人類の現状を知るのだった。銀河はガトランティスの後方部隊攻撃の作戦を実行、そして無人機攻撃隊ブラックバードの中に死に場所を求めて先陣を切る加藤の姿があった。

総員退艦の際に頭部を負傷した雪が目覚める。が、古代と過ごした4年分の記憶と引き換えに過去の記憶をとり戻していた。その状況を目の当たりにして古代は動揺を隠せなかった。一方、白色彗星の重力に引かれヤマトが不時着したのは、かつてガトランティスを創り出したゼムリア人の母星だった。そしてゼムリアの母星は彗星帝国が囲う中にあった。ゼムリア星の探査に出ていたキーマンと斉藤と永倉そしてアナライザーは不思議な建造物に出くわす。そしてそこでゼムリア人の記憶媒体を入手。解析をする過程においてガトランティスとズォーダーの”愛”と”絶望”の歴史が語られるのだった。そしてガトランティスを滅ぼす手掛かり「滅びの調べを奏でるもの“ゴレム”」の存在を知る。それはズォーダー大帝と共にあることも知る。そしてヤマトが知った事実はズォーダーには筒抜けだった。

ガトランティス対地球・ガミラス連合艦隊の攻防戦は徐々にガトランティスが圧していた。ガミラスの盾を破壊した彗星帝国は、太陽系の奥へ、火星軌道へとワープしていった。

彗星帝国が火星軌道にワープし、前線は火星が絶対防衛圏となり攻防戦は熾烈を極めていた。そんな最中、アンドロメダ艦長だった山南艦長が率いるアンドロメダ改の艦隊が彗星帝国の頭上にワープアウト。そして一斉に波動砲攻撃を実行するが、強力なシールドに阻止されてしまう。時間断層工場で次から次へと製造されては前線に戦艦を投入する地球防衛軍だが、彗星帝国を前にことごとく粉砕されていく。が、指令本部参謀の芹沢は“時間稼ぎと物量戦”終わりのない消耗戦を強いる。そんな芹沢を見て指令本部長の藤堂は危惧する。そしてすがる様に「ヤマト」とつぶやくのだった。

彗星帝国内部では、ガトランティスの秘密を知ったヤマトもろともゼムリア星をレギオネルカノーネ(第三章参照)で葬ろうとする。ゼムリア星が崩壊していく中、ヤマトは間一髪で離陸し脱出する。

地球・ガミラス連合艦隊の奮戦虚しく、彗星帝国は火星絶対防衛圏を突破しようとしていた。そんな中、アンドロメダ改の山南が彗星帝国の重力圏に捕らわれているヤマトの存在を確認する。そして山南は単艦で重力圏の破壊とヤマト救出を試みる。ヤマト生存の一報は銀河にいるヤマトクルーにも知らされる。真田たちは艦長の藤堂早紀に、山南のアンドロメダ改の波動砲を銀河のコスモリバースシステムを用いたパワー増幅させ彗星帝国の重力圏破壊の援護を意見具申するのだが、リスクとメリットから判断した銀河のAI(ブラック・アナライザー)はそれを認めなかった。それどころか連動する地球のAIは、この戦闘の状況から、人類存続の為の「G計画」を発令。銀河に戦線離脱を命じる。意見具申を茶化される形での横やりなAIの命令に、「お前に聞いていない!」と真田は激昂する。そしてAIの命令とヤマト救出との間で選択を迫られる艦長の藤堂早紀の出した答えは、銀河のAI(ブラック・アナライザー)の破壊だった。銀河は山南のアンドロメダ改の援護へ向かい、コスモリバースで増幅されたアンドロメダ改の放った波動砲で重力圏の破壊に成功。山南はヤマトを最大出力で曳航、彗星帝国の重力圏からの脱出を果たすのだが、長時間にわたって最大出力で曳航し続けた山南のアンドロメダ改は限界を迎え、オーバーヒートから波動エンジンはもちろん船体もろとも爆発してしまう。アンドロメダ改とともに山南も死んだと誰もが思ったその時、爆炎の中から一機のブラックバード現れる。それは山南を間一髪で救助した加藤機だった。

地球の時間断層工場では急ピッチでヤマトの修理と改装が行われていた。銀河に乗艦していた真田や島をはじめとするヤマトクルーもヤマトへ戻ってきた。事故により4年間の記憶を亡くした森雪を見て島が古代に同情する。がそれに対して「以前から亡くした記憶が戻っただけだ」と強がる古代だったが、悲しさは隠し切れなかった。

ヤマトの作戦室では、最終決戦に向けての作戦の確認が行われていた、それは彗星帝国へ侵入して「滅びの調べを奏でる“ゴレム”」を起動させガトランティスを壊滅させるというものだった。そしてその突破口を開くために有効な武器は“トランジット波動砲”ということで一致する。がその時、古代が「ズオーダーへの説得」を提案するが周囲は反対する。結局、土方艦長の英断により「チャンスがあったら試みろ、ただし潮時はわきまえろ」と許しが出る。そのやりとりの一部始終見ていた森雪は、「なぜ彼(古代)はみんなが反対するのに自分の主張を通そうとするのか」とつぶやくと、それを聞いた航空隊副長の山本玲は森雪に「それが古代さんです」「そんな古代さんをあなたは愛した」と言うのだった。そしてこの作戦会議には空間騎兵隊の姿がなかった。それはガトランティスに急襲された第十一番惑星から途中乗艦した空間騎兵隊の中に内通者がいるのではと疑惑のためだった。そしてその疑惑を否定することができずに斉藤隊長は苛立つのだった。

絶対防衛ラインを破り、彗星帝国が徐々に地球への侵攻をし始める状況で、地球からは修理と改装を終え、最終決戦に向けてヤマトが発進した。地球圏を抜け前線に向かうヤマトの艦橋では、キーマンがヤマト前方に微かに光る信号を感じとる。そしてその光の地点には、アベルト・デスラーが乗艦する“ノイ・デウスーラ”があった。そしてデスラーはヤマトに向かってデスラー砲を放つのだった。が、間一髪ヤマトはワープ。そしてヤマトはノイ・デウスーラの目前にワープアウト。ヤマトはそのままノイ・デウスーラに突撃して白兵戦となった。ノイ・デウスーラからはガトランティスの白兵無人兵器“ニードルスレイブ”が多数ヤマトへ侵入する。それを空間騎兵隊が纏う“二式空間機動甲冑(パワードスーツ)”で迎え撃つ。斉藤たちが防戦を繰り広げる中、古代とキーマンたちはデスラーの元へ向かう。

ヤマトに侵入した“ニードルスレイブ”を撃破し阻止する斉藤たち空間騎兵隊。“ニードルスレイブ”の攻撃で斉藤のパワードスーツの関節が破壊され、永倉のパワードスーツも動かなくなり窮地に立たされる。斉藤は永倉を守る為に自らのパワードスーツを脱ぎ捨て、生身で永倉の盾になり仁王立ちしたその時、眼前の“ニードルスレイブ”が斉藤をスキャンし始め、その結果攻撃を中止しその場を去っていった。それは斉藤がガトランティスであると認識したことを意味する。自分がガトランティスの内通者だと気付いた斉藤は膝から崩れ落ち泣き叫ぶのだった。

一方、古代とキーマンはデスラーの居るメイン艦橋へたどり着く。「なぜデスラー砲発射前にヤマトへ発光信号を送ったのか」キーマンがデスラーに尋ねたその時、ガトランティスのミルの凶弾がデスラーを襲う。そしてミルはキーマンに悪魔の選択をもちかけるのだった。「ヤマトを倒せ。そうすればガミラスの移住先と安泰を約束する」と・・・。

時間断層を過信する防衛軍司令部

一言でいうならば、本作「回生篇」は“ガトランティスvs地球・ガミラス絶対防衛ラインの攻防戦”の話だ。この攻防戦では物量、物量、物量・・・とにかくげっぷが出るほどだ。ガトランティスの物量にも驚くが、防衛軍側の物量はあきれるほどだ。いくら時間断層工場がフル稼働しているからって、次から次へとアンドロメダ級戦艦やドレッドノートが前線にワープアウトしてくるんだから・・・。

だがそんな状況は連邦政府及び防衛軍司令部の過信が生んだ産物だ。地球連邦防衛軍・統括司令副長の芹沢は、時間断層での物量を過信する面子の筆頭として描かれている。本来ならガトランティスの侵攻を防衛する目的での戦力層強だと思うのだが、芹沢は「時間断層工場で戦艦を製造して前線に投入する為に前線の艦隊に一時間でも一分でも一秒でも持ちこたえろ」という様なニュアンスのことを言う。何かズレているというか、目的を履き違えている様な・・・。それにもまして短期間で大量に製造される戦艦に対して乗員が追い付かず、無人艦隊が編成される。元アンドロメダ艦長の山南が再出撃した際のアンドロメダ改の艦隊は、山南のみが乗艦しており、率いていたアンドロメダ改の艦隊には乗員の影はない。

イスカンダルとの約束を反故にして推し進める「波動砲艦隊構想」もキナ臭い。それに加えて危険極まりない「G計画」なるものが登場して・・・。

「G計画」の行く末は?

波動実験艦「銀河」に移乗した真田や島らのヤマトクルーは「G計画」の全貌を知る。それは他の惑星への人類移民計画。そして「G計画」の中核をなすのが波動実験艦「銀河」だ。劇中から読み取れる「G計画」のキーワードとして、“精子のストック”、“人工授精”、“人体の機械化”などがあり、「G計画」における移民とは、「宇宙戦艦ヤマト・復活編」のような大規模な移民船団を組織して大勢の人間を移民させるのではなく「銀河」で完結する。その為に「銀河」のクルーは女性が殆どとなっている。

「G計画」にしても、リバース・シンドロームによって生じた“時間断層”があってこその計画だ。“時間断層工場”では戦艦の造船だけをしているわけではなく、科学(化学)や技術の開発も急速度(地上の10倍)で行われているのだろうから、現状「G計画」で予定されている“人工授精”は、“クローン増殖”などへと派生する可能性だってあるかも知れない。となると「波動砲艦隊構想」や「G計画」による移民など、拡大政策を行っていた頃のガミラスやイスカンダル、破壊を繰り返すガトランティスと変わらない道を地球は歩んでしまうのではと危惧してしまうのは僕だけだろうか。

そしてすべては、リバース・シンドロームが生んだ“時間断層”が起点となってるのだ。

「回生篇」で描かれるいくつかの愛のカタチ

「愛の戦士たち」というサブタイトルがついているとおり、本作品では色々な愛が描かれている。そしてその多くはガトランティスのズォーダー大帝がヤマトに課す“愛のミッション”(僕が勝手にこう呼んでいるのだが・・・)なのだ。(中にはガトランティスとは無関係の愛が描かれている場合もあるけど・・・)

そしてこの「回生篇」でも・・・。

古代と雪、突き付けられた再び愛の試練

ヤマトの機能が沈黙して彗星帝国に沈んでいく中、森雪は捕虜の桂木透子の避難に手を貸す最中の事故に巻き込まれる。この事故がきっかけで森雪は、以前から失っていた記憶を取り戻したのだが、その代わりに古代と知り合って過ごした3年間の記憶を失ってしまう。そんな雪を目の前にして現実を突き付けられた古代は混乱し落胆する。そして二人の間には見えない溝が出来たかのように思えたが・・・。

記憶がリセットされた森雪は、かつて二人は恋人だったことを山本玲から聞かされ戸惑う。そんなことがあってか雪は古代のことを意識する。そして一本気で自分の考えをしっかりと持ち信念を貫こうとする古代が気になって仕方ないようだ。二人の愛は、雪のリセットされた記憶という大きな障害をも乗り越えていくに違いない。

ちなみに雪の記憶がリセットされたのはズオーダーの仕組んだことではない様だ。

ズォーダー大帝が抱く愛への憎悪

「愛は宇宙に争いをもたらす」と、憎悪に似た感情で頑なに否定するズォーダー大帝。「人間は感情に踊らされて無益な争いを繰り返した末に自滅する存在」と古代に語ったのは『第三章・純愛篇』。それは、ガトランティスが個人の情愛に流されない人造生命であるが故、宇宙の摂理と調和できると主張する。人間の愛がエゴである証明として幾度となく、愛を天秤に掛けた残酷な選択を迫る。

『第六章・回生篇』では、ズォーダー大帝の「愛」に対する考えに、いかにして至ったかも描かれている。それはヤマトが不時着した惑星ゼムリアで明らかにされた。ズォーダー大帝は、ガトランティスの創造主であるゼムリア人によって、タイプ・ズォーダーと呼ばれるクローンとして生み出された。その能力は、感応波ネットワークによる兵士の統率、諜報戦へ対応する為の精神構造と記憶領域を持って作られ、他のガトランティス人を統率する存在であり、ある意味人をも超越する能力を与えられているといえる。

そんなズォーダーは、オリジナルのシファル・サーベラーとの間に愛を育み、自身のクローンとなる赤子と三人で擬似的な家族関係を構築、それは人と変わらぬ愛のカタチだった。1000年前、自らの境遇に疑問を抱いたズォーダーは、創造主であるゼムリア人への反乱を画策する。がその計画はゼムリア人の裏切りによって潰され、妻のサーベラーと赤子は殺害されてしまう。ズォーダーはサーベラーの遺体とわずかに残ったガトランティス人たちを引き連れてゼムリアをあとにし、宇宙を放浪の末、古代アケーリアス文明が残した破壊装置、「滅びの方舟」へと至るのだった。そしてズォーダーは、その力を用いてゼムリア人を滅ぼし惑星を捕らえた。それは裏切りから100年後のことだった。ゼムリア人の裏切りをきっかけに、ズォーダーは人間に絶望を覚え、人間の愛を頑なに否定し憎悪するようになった。

ゼムリアの記憶装置によってズォーダー大帝の秘密を知った古代は、ズォーダー大帝との対話(説得)を試みようと画策する。はたして厚い氷に閉ざされたズオーダーの心を溶かすことは出来るのか?(これも古代の愛か?)

キーマンが背負う選択

ガトランティスはまたしても“悪魔の選択”を突き付けた。今度はキーマンがその対象だ。それは「ヤマトを倒せ。そうすればガミラスの移住先と安泰を約束する」というものだった。『第五章 煉獄篇』でキーマンはヤマトの一員であることを選択し、その絆を深めていったのだが、ズオーダー大帝の命を受けたミルは、それを引き裂こうとする取引を古代の目の前でキーマンにもちかける。キーマンはヤマトのクルーであると同時にデスラーと同様にガミラスの王家の血を引く者だ。ガミラスへの愛をとるのか、それともヤマトと共に果たすべく使命をとるのか?

土方艦長の声優がチェンジ

この作品の収録中に土方艦長の声を担当していた声優の石塚運昇さんが死去。途中から楠見尚己さんがバトンタッチして声を務めている。

石塚運昇が逝った直後には、僕もこのブログで追悼の意味も込めて記事をアップしたので、もしよかったら読んでみてね!

記事はこちら→

“ジェット・ブラック”星になる。声優・石塚運昇さん死去

個人的には運昇さんの土方艦長でなくなるのは残念だけど、石塚運昇から楠見尚己の声のバトンタッチは見事で、楠見さんは見事に土方艦長を演じてみせています。