フロントグラスの上をキョロキョロと動く目。飛び出したり引っ込んだり膨らんだり萎んだりするタイヤ。自在に動くフロントグリルの口がクルマに豊かな表情を作り出す。
たかがクルマ。されどクルマ。
カーズに出てくるキャラクターたちは、みんな愛くるしくて憎めない。そんな憎めない奴らが、またスクリーンに帰ってきた。
衝撃的な予告編映像
「ずっと走り続けてきた。」
「そして・・・」
「これからも走り続けると思っていた。」
バンクでコントロールを失いフェンスに接触。そして次の瞬間、ボディの破片をまき散らしながら宙を舞う、傷だらけのマックイーンのボディ。
こんな衝撃的なシーンから始まる「カーズ/クロスロード」の映画予告。
今年の春頃から映画館で流しだされたこの予告編。最初に見た時の驚きは、今も鮮明に覚えているわけで・・・。その日より公開が待ち遠しくなって・・・。
また、マックイーンの衝撃クラッシュシーンの後、静かに流れる奥田民生の「エンジン」(日本語版エンディングテーマ曲)が、これまた秀逸。カーズの世界観を一段も二弾も引き上げて表現してくれています。
人生の岐路(クロスロード)に立つマックイーン
ピストンカップ7回の優勝。主人公のライトニング・マックイーンは、今や生きる伝説となりつつある人気ベテランレーサー。キャル(ダイナコのレーサー)やボビー(オクタンゲイン)や、最新テクノロジーを駆使した次世代レーサーたちと切磋琢磨しながらレースでしのぎをけずっていた。
そんな中、次世代レーサーの筆頭としてルーキーのジャクソン・ストームが現れ、マックイーンをはじめとするベテラン(旧世代)レーサーを尻目に圧倒的な性能の差で連戦連勝。ベテランレーサー達は一人(一台か?)、また一人と引退や解雇に追い込まれていく。マックイーンは気のない素振りはしつつも、生意気で忌々しい態度のストームを次第にライバル視するように・・・。今や、勢力分布は次世代レーサーへと傾いていた。
そしてシーズン最終戦「ピストンカップ」。圧倒的な力の差を見せつけ疾走するストーム。それを必死に追走するマックイーン。焦る彼はレース展開も次第に無理をするように。結果、タイヤのバーストからコース上でコントロール失い大クラッシュを起こしてしまいます。
大クラッシュから四か月後、修理を終えたマックイーンは恋人サリーや親友メーターたちがいる、ラジエタースプリングスで自分のこれからのことを考えていた。マックイーンは、師匠ドッグ・ハドソン(故)の引退の原因となった大事故の映像を見る。そしてレーサーとしての再起を決意する。
再起に向けて動き出したマックイーン。スポンサー「ラスティーズ」の売却によるオーナー(スターリング)交代。「ラスティーズレーシングセンター」の新トレーナー、ラミレス・クルーズとの出会いとマックイーンの「再生化計画」。ドッグの元レーシングスタッフ、スモーキーやピストンカップのレジェンドたちとの出会い。新オーナーからの引退勧告などなど・・・。
人生の岐路(クロスロード)に立つマックイーン。彼の選んだ再起の道は?
テーマは「挫折と再起」
「カーズ/クロスロード」では、マックイーンの師匠ドッグ・ハドソンの「過去とその真相」が物語の重要な伏線となっている。トーマスビル・スピードウェイの連中から語られるドッグの話は、マックイーンの再起に大きな影響を与えることとなる。
当時、生きる伝説として大人気を博していたドッグ・ハドソンだったが、レース中のクラッシュが原因で、ドッグは世間から見捨てられ、再起の選択肢もないまま引退してしまう。そしてラジエター・スプリングスに移り住む。その後、ずっと音信不通だったドッグからある日をさかいに、トーマスビルのスモーキー(ドッグのチーフクルー)のもとに手紙が届くようになった。それらの手紙に書かれていた内容は、ドッグの今一番の生き甲斐が書かれてた。それはレーサーとしての生き甲斐ではなく・・・。
このドッグの手紙は、今回マックイーンが最後に導き出す「再起」の答えの大きなヒントになります。さてマックイーンは挫折から這い上がり、どのような答えをもって再起を果たすのか?
そしてこの物語の中では、もう一人挫折を抱えた奴がいます。誰?そいつはマックイーンのトレーナーであるクルーズ・ラミレスです。子供の頃、マックイーンの活躍を見てレーサーに憧れを持った彼女は、レーサーを夢見るも挫折。夢をあきらめレーシング・トレーナーとしての道を選び今日に至っていたのです。でも本当に彼女は夢を諦めきれているのか?クルーズの夢への再起はあるのか?
大人も楽しめる「カーズ/クロスロード」
1作目のカーズでは「仲間と信頼」、2作目カーズ2では「友情」、そして今回の3作目カーズ/クロスロードでは「挫折と再起」がテーマになっていて、なかでも今回の3作目のテーマ「挫折と再起」が一番、僕ら大人の心に響くかもしれません。
また、今回の予告編が実写さながら・・・、いやアニメの特性を最大限に活かした実写以上の迫力は、子供向けのアニメ映画の域を超えてます。
そして、日本語吹替版のエンディングテーマ曲、奥田民生の「エンジン」が、これまた大人ぁ~って感じのイカす曲。アメリカの大陸横断道路ルート66がイメージとして浮かぶような雰囲気の一曲。
また歌詞の中の・・・、
国境を越えたって 青い空 白い砂。
そろそろそこら中 オレンジに染まる。
景色を眺めて 考えたりしない。
明日も目の前に 道は続いている。
~中略~
山を越えて 時を超えて。
(エンジン 作詞・作曲 奥田民生 より抜粋)
って部分は、この物語のテーマを反映しているように思えて、面白い。
テーマ、映像そして音楽などなど、とにかく大人が楽しめる演出がそこら中に仕掛けられていて、ディズニー・ピクサーと言えど、単に子供向けではない作品と言えるんじゃないかな。
「青い自動車」、そして「カーズ」
「青い自動車」って知っていますか?
1952年に製作されたディズニーの短編アニメで、原題は「小型クーペのスージー“Susie, the Little Blue Coupe”」。子供の頃、「青い自動車」の絵本があって、大好きでページがボロボロになるまで呼んでいたことを思い出します。
「カーズ」といえば、フロントグラスに表現された目、柔軟に動くボディやタイヤ、そしてフロントグリルの口。車を擬人化する技法としてこのような表現を用いた作品ですが、「青い自動車」も同様の表現を用いて、スージーの言動や心の内をカーズのキャラクター同様に見事に表現していました。
クルマのフロントには左右に配置されたヘッドライト、横に大きく開いたフロントグリル(エアインテーク)があって、例えば日本が一般的にクルマを擬人化する場合、たいていはヘッドライトを目、そしてフロントグリルを口として表現すると思うんだけど、ディズニーの場合は本当にオリジナリティがある。フロントグラス上に目を表現することで、ヘッドライトの目と比較しても表情がより豊かになり、車を正面から見た場合、人間の表情により近くなる。
ミッキーマウスやドナルドダックなどに始まり、ホウキ、キャンドルスタンドやコーヒーカップなど、動物や物を擬人化してきたディズニーの発想から生まれる表現力って本当に凄いですね。(比べて日本のアニメでは、動物や物の擬人化の表現って悲しいかな乏しいと言わざるおえない^^;)
スージー可愛いです!
ラジエター・スプリングスの仲間達も元気に登場
マックイーンの安らぎであり心のよりどころ、ラジエター・スプリングスの仲間も本作品でもしっかり登場。相変わらずの元気ぶりです。
ひょうきんでおやじギャグが大好きなメーター(赤さびのレッカー車)。影日向でマックイーンを支えるガールフレンドのサリー(ブルーの911カレラ)。タイヤ店を経営するルイジ(FIAT500)。マックイーンのピットクルーでルイジの親友のグイド(フォークリフト)。などなどお馴染みの顔ぶれがマックイーンを支えています。
窮地に追い込まれたマックイーン。再起をかけ彼はどんな道を選択するのか?
岐路に立つマックイーン。まさに「クロスロード」。
気になる方も、気にならなくても劇場へGO!です。
[…] 「カーズ/クロスロード」フロントグラスが目の奴らが帰ってきた! […]